私の画集は電子版で、二点発行されています。
先に紹介した津原泰水先生と、岡本賢一先生にお願いしました。
今回は岡本賢一さんの画集への添え書きです。
岡本賢一先生は、「放課後退魔録 ワラキズ<放課後退魔録> (角川スニーカー文庫)」
等軽快な文章が素晴らしい作家さんです。
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「ジューンっていう雑誌、あれはなんなんですか?」顔見知りの女子大生に、白昼の往来でそんな質問をされた。僕が小説かきを生業としており、少しは本や雑誌のことに詳しいだろう、と思っての質問だった。だが、ジューンという雑誌名はとんと聞いたことがない。
「ゼミの課題で、乙女ロード(腐女子の聖地)について調べているんです」
と言われ、僕はきづいた。
「それはジューンではなく、JUNE(ジュネ)だ!」
「JUNEってどんな雑誌なんですか? なんか怖くて読めないんです。岡本さんは知ってますか? JUNE」
「頼むから、その雑誌名を人前で連呼するのはやめてくれ!」
知っているもなにも、親兄弟にも告知できないその雑誌に、実は本名で、4作も小説を載せてしまっているのだ! とはさすがに言えない。口が裂けても言えない。当然のごとく、口が裂けたら痛くて言えない。ひらたく言うならばJUNEは、美少年や美青年が、くんずほぐれつ、差しつ差されつ、する耽美な小説や漫画の掲載された雑誌である。 どういう経緯で僕が、JUNEに作品を書くことになったのか、自分でも、今もって良くわからない。お金に困っていたわけでもないし、ゲイとかBLとか、そっちの気があったわけでもない。なぜ、こんなことになったのだろう?なんらかの力によって操られていたとしか思えない。まったくもって人生とは、不思議である。いずれにしろ、書いちゃったんだからしょうがないじゃないか!JUNEに掲載された4作のうちの最後の1作は笹生撫子(さそうなでしこ)氏との合作である。これも、どういう経緯で合作することになったのか「10 日前の夕飯のおかず」くらい良く思い出せない。合作小説のプロットは僕が考えた。考えたはずである。それを元に電子メールのやりとりで、頭から作って行った。それなのになぜか、プロットとはぜんぜん違う、というか意図的にねじ曲げられた、衝撃のクライマックスとなった。すべて笹生さんの意図である。意図によって、 僕は巧妙に操られた。そう言い切っても過言ではない。
......たぶん。 そして、彼女が究極の超弩級Sであることを、僕は合作するまで知らなかった。ちなみに笹生さんの『ピグマリオンの庭園』という小説は、鋼鉄製の人体破壊ロボットが美少年たちと危険な交わりをする話だ。JUNEに掲 載された作品の中には、その過激さから、クライマックスが袋綴じにされた作品もあるほどなのだ。合作小説における僕の衝撃を、水戸黄門のドラマで表 現するならば「黄門さまが八兵衛に強姦され」さらに
「ドSな八兵衛が、黄門さまを痛めつけすぎて、うっかり殺害!」
な感じなのだ。うっかりするにも、ほどがある。
自分の小説でありながら、これほど、クライマックスにおける登場人物の心情が理解できなかったことはない。ただただ人形のように感情を押し殺すしかなかった。
いずれにしろ、書いちゃったんだからしょうがないじゃないか!
この合作小説『死の趣向』と、僕が最初に書いたJUNE小説『塔の少年』、そして笹生さんが書いた危険な『ピグマリオンの庭園』を合わせて文庫化するという話になった。
それが小説家、津原泰水プロデュースによるテディ文庫『趣向』である。テディ文庫に関してはおもしろい暴露話がいっぱいあるけれど、それはまた別の機会に。
この時、イラストを描いてくれたのが目黒さんだった。漫画やアニメ系のイラストがつくことが多い僕としては、重厚かつ繊細で美しい目黒さんの絵は、恐れ多いくらいありがたかった。
そして完成したイラストは、想像以上に素晴らしかった。とくに表紙に描かれた主人公の陰鬱とした表情がぐっと胸に響く。
白い肌、サラサラの髪、人生を達観したようなその瞳は、なにを見つめているのか?
目黒さんの人物画、特に男性の瞳には共通した陰がある。この瞳には見覚えがあった。暗い森の奥にそっと広がる
静かな湖の水面を思わせる、あの瞳。そう、あれは確か……。
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僕は絵描きではない。絵のうまい下手の判断はできない。でもわかる。目黒さんには、小説の世界観を的確に視覚化できる、特異な才能が備わっている。そこへ絵の個性をはめ込む技術にも長けている。それにより、挿絵を目にした作者は「その絵のイメージで自分は小説を描いた」そんな錯覚に囚われてしまうほどなのだ。
ーーーーそう、思い出した。あの陰鬱とした瞳。あれは憂いを帯びた球体関節人形の瞳だ。主人の思うがまま、どんな
色にも染まる、感情を押し殺した人形(ピグマリオン)だ。けれど、操り人形ではない。
目黒さんの仕事に対するバイタリティを見ればわかる。操られているわけでも、流されているわけでもない。
ままならないこの時代を生き抜くため、自分の感情を押し殺して抗い、その奥に闘志を秘めた、清くて強い瞳なのだ。
(了)
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この添え書きも、軽妙洒脱でありながら、しっかりと絵を受け止めて、褒め過ぎな位、褒めて下さったもので、大変ありがたかったです。
それから、春の課題用の絵が一段落しました。
右下、左下のレースを描くのが死にそうでしたが、
画像では良く見えないですね。
これから更に詰めて完成としたいです。
それから、てんこちゃんに教えて貰った『ペルソナ』のアニメ見ました。
私が見たのは、PS4だったのですが、絵がめっちゃ綺麗でした。
そして戦闘シーンがカッコ良い!音楽すごい!
アニメって久しぶりに見たのですが、
(最近観た映画といえば、寺山修司さんの「書を捨てよ街にでよう」でした…)
今のアニメって進歩してるんですね。
これは置いて行かれないように頑張らねばです。
拍手ありがとうございました!
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Hさん、拍手ありがとうございました!
本当に鳥肌が立つような美しい文章ですよね。もったいないです。
私の絵のファンだなんて…いいんですか、こんな絵で。
私もHさんの絵のファンです(^_^)/
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1. 無題
絵、ど迫力ですね!美しい〜!人なのに、こんなに素敵な絵を描けるっていうのが不思議な気がするのは私だけかな。
ペルソナ、私はゲームのファンですw今年もペルソナゲーム発売される予定ですよ
Re:無題
バービニーさん、岡本先生の文章面白いでしょう。
導入で笑わせておいて、締めるべき所は締めるって
感じでさすがプロの小説家はすごいな、と思います。
バービニーさんはゲーム版のペルソナおやりなんですか?
羨ましい〜〜〜!私はアニメ版しか観ていないのですが、
きっと凄く面白いんだろうな〜と思って観ています。
それにしても主人公君のペルソナかっこいいですよね…!